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【NEWS】《問わず語りの人間力原論》高見大介(日本文理大学 人間力センター長) 「人間力について(2)~共に生きる力の肯定」大分合同新聞掲載記事

 ある生物学者によれば、我々は動物の中では珍しく、知識を欲する動物であるという。それを踏まえると、その欲求を体系的かつ組織的に満たそうとしてきたのが学校という事になるのかもしれない。公平な教育のために教科書が出来上がり、その成果を便利に可視化するために偏差値なるものも生まれた。しかし、我々の知的欲求はそれだけでは完全には満たされない。何か学力とは別の力も欲している。


 知識はよく海に浮かぶ氷山に例えられる。海面から顔を出した部分がいわゆる学力となる。海水に隠れた部分もまた同じ氷山で、見える部分よりも大きいとされるこの隠れた部分が知識や知恵と例えられる。なるほど絶妙な例えだ。


 この隠れた部分の重要性を話すとき、私はよくドラえもんの話をする。のび太との結婚前夜、自分だけが幸せになることにためらい、思い悩むしずかちゃんに、パパは「人の幸せを心から願い、人の不幸に心を痛めることのできる人を選んだ君を誇りに想う」と話して聞かせ彼女の背中を押す。


 優等生とはいえない、のび太の隠れた魅力はまさに「共に生きる為の力・知恵」であり海面に隠れている氷山の見えない部分なのだ。この「共に生きるための力・知恵」を多くの人々との出会いで会得したのび太はただの劣等生ではないし、その力を魅力として捉えたしずかちゃんもまた大した眼力の持ち主だ。そして何より、パパのように見えない魅力を持ちながらも、それに悩んだ若者を肯定できる大人でありたいと想う。

たかみ・だいすけ 日本文理大学人間力センター長。学生の主体的な社会参画をボランティア活動を通して実践する。専門は初年次教育、ユースワーク、ボランティア論。39歳。



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